感染拡大続けば、金融緩和は「コロナ相場」の特効薬になれず

[東京 25日 ロイター] – 「安全地帯」と見られていた米株市場が24日に急落し、世界同時株安の流れが25日の東京市場にも波及した。市場ではまだ「調整」との見方も根強く、その背景には米連邦準備理事会(FRB)による追加緩和への期待がある。ただ、「特効薬」のない新型コロナウイルスの感染者が世界の多様な地域で増加するなら、金融緩和などのマクロ政策で解決するのは難しくなる。

日本では政府の専門家会議が感染拡大を巡り、今後1、2週間が「瀬戸際」と表明、感染拡大期に入った場合、日本経済は大きな苦境に直面する可能性が浮上した。インフルエンザ治療薬「アビガン」の使用に前向きな姿勢を示した日本政府のスタンスが、当面は数少ない「光明」と言える。

<大幅下落は「適度な調整」の声>

25日の東京株式市場では、日経平均.N225が一時、前週末比1000円を超す下落となったが、市場の一部には楽観論も少なくない。24日の米株式市場が大幅下落となったものの、株価水準自体は最高値の近くで推移しており「適度な調整」(国内証券)との声もある。

FRB自体は、追加緩和の姿勢を見せていないものの、市場の多くが「大幅続落なら追加緩和」(国内銀行)とみているからだ。このため25日の米株式市場は反発するとの予想が多く、連鎖安はひとまずNYで止まるとの見通しが少なくない。

<感染拡大と緩和期待、繰り返すサイクルの可能性>

確かに短期的には反発する可能性があるとみられるが、今回の「コロナ相場」の背景には、当初の想定を超えた新型ウイルスの「感染力」の強さがあり、イラン、イタリアで猛威を振るった新型ウイルスが、また、別の国や地域で感染者を増やしたと報道されると、世界の株価を押し下げる要因になるだろう。

特に注目されるのは米国だ。米疾病対策センター(CDC)は14日、米国内5州で季節性インフルエンザの監視システムを利用して、新型コロナウイルスの検査を始めると発表した。

一方、トランプ米大統領は、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から下船した米国人のうち、14人の感染者が陰性反応の下船者と同一のチャーター機で帰国したと伝えられ、激怒したとワシントン・ポスト紙電子版が22日に伝えた。もし、報道された内容が事実なら、トランプ大統領は米国内での新型ウイルスの感染拡大に「神経質」になっている「状況証拠」と言えるだろう。

米国内で感染者が増え始めるという現象が起きれば、市場は新たな「反応」を示すのは確実。再び、リスクオフ心理から株安と債券高の同時進行が起きると予想される。

その後、FRB幹部から「事態を注視」などの発言が出て、株価は好感して上昇する──だろう。

だが、感染が終息しない限り、「感染拡大」と「追加緩和期待」が交互に巻き起こり、その間、株価は緩やかに右肩下がりのトレンド線を描くのではないか。

このサイクルを繰り返しているうちに、市場参加者の多くにも「金融緩和では、根本的な解決にはならない」という心理が広がるだろう。中期的は「緩和期待が、特効薬にはならない」というイメージが定着すると予想する。

<拡大の危機なのに、発動されない移動規制>

最も感染者が多い中国から遠く、対中貿易依存度が相対的に低い米国は、それでも長期化する「コロナ相場」への耐性が、日本やドイツよりも強いとみられる。

地理的に中国に近く、対中貿易依存度が米国より高い日本は、さらに大きなハンディを背負いつつある。それが新型ウイルス「拡大期」への移行だ。

専門家会議が「1、2週間が瀬戸際」と指摘したものの、政府が25日に発表した新型コロナウイルスの感染症対策の基本方針では、「移動規制」に言及がなかった。感染症対策の専門家の中には、地域を限定した「移動規制」や強制力のある「イベント規制」を実行しなければ、感染拡大が避けられないとの見解も出ている。

もし、拡大期から「蔓延(まんえん)期」へと早期に達した場合、日本の社会と経済が受ける衝撃と打撃は、計り知れないだろう。単に五輪の開催辞退だけで済まず、病院機能のマヒなどを含む社会インフラの機能阻害が表面化しかねない。

そのケースでは、世界の各市場が織り込んでいる新型ウイルスのリスクに、日本固有のリスクが上乗せされ、日本株の下落率が際立って大きくなることも想定される。

<試されるアビガンの効能>

ただ、光明もかすかに見えている。加藤勝信厚労相がインフルエンザ治療薬「アビガン」を新型コロナウイルスの患者に投与したことを22日の会見で表明した。新型インフルエンザのような「RNAウイルス」の増殖を抑えることが期待され、同じRNAウイルスの新型コロナウイルスにも効果があるとの見解も専門家の一部にある。

この先、長い年月が必要なワクチンや新しい治療薬の開発は、数カ月単位では望めない。もし、アビガンの効能が認められれば、最も手近なところにある「治療薬」の可能性がある。

もちろん、副作用などへの最大限の配慮が必要であるが、感染拡大へ「瀬戸際」の日本にとって、アビガン投与の知見が広く共有され、終息への道筋が見えることが、今のところ、最も有効な選択肢に思える。

 

参考サイト


金融庁

経済産業省

財務省